お客様の声に度々投稿くださる〈地元に根付いた野菜〉さんが、ミックス堆肥に対する熱い思いを寄せてくださいました。
以下、原文のまま、ご紹介させていただきます。
千成産業さんはこの地で堆肥を作っています。いにしえには国分寺を立てた時にその瓦をこの地で焼いたと言われます。近頃までこの地は小川にはクキやメダカが泳ぎ家にはホタルが訪れました。そこでツバメが家の中に巣を架けてヒナを育てるような、自然と一体になってそれをだいじに使った暮らしが営まれていました。堆肥を作るときには要らなくなった物をだいじに活かしますが、ミックス堆肥では要らなくなった食べ物を活かして作っています。私はそれに学んで我が家のいらない物を使って箱庭のようなものを作ってみました。一番手前の石は古い母屋の土台の石をタクアン漬の重石にしていたもの、一番奥のリュウノヒゲは道端に生えてしまったものなどです。ここで、その堆肥について私がこの地から見てきたものを私なりの独断で整理しました。
1.自給自足の時代の堆肥
自然と一体になった暮らし方では生活に必要なものは主食まですべて自分で作ってまかなう自給自足の生活がされていましたが、その暮らしぶりは使えるものは無駄なく使えるように工夫されていました。たとえば裏庭に竹林を仕立てて北風を防ぎその竹で畑仕事の道具を作る、雑木林の落ち葉は霜対策に使い小枝は燃料にしてその灰は肥料にする、そして霜対策の終わった落ち葉は雑草を餌に飼った家畜の糞や家庭のものと共に堆肥の材料にするなどです。そんな暮らしでは堆肥を使って作物を作りそれを食べて暮らす中から出たもので堆肥を作るまで、ひと廻りして戻る環がその家庭生活の中だけできれいに廻っていました。分かりやすく言うと“食べた事で出来たもので食べる物を作りそれを食べる”事です。このような環は生物の基本的な営みになりますが、ここでは堆肥に焦点を当てていますので仮に“堆肥づくりサイクル”と呼ぶことにします。堆肥づくりサイクルは自然の営みの一部分で堆肥つくりはその環を造る役割のひとつだと云うことです。そして堆肥は耕すことと共にかく汗に見合っているものだと長い付き合いのなかで作物から教わって、収穫を増やす励みとして使って来ました。
2.農業の時代の堆肥
硫安(硫酸アンモニュウム)過リン酸(過リン酸石灰)カリ(塩化カリウム)などの化学物質を振り撒くだけで作物を作ることが出来る化成肥料が普及して、その労働効率の圧倒的な良さはすぐに堆肥を追い払って有機栽培は田畑から姿を消しました。それは、化成肥料を使えば自然の働きに頼って堆肥を作らなくても生活できるだけの作物を作ることが出来るようになって、農業が成り立つようになったからです。食糧作りは農家に任せてほかの人は別の職業に就くことで社会を豊かにする分農分業の社会に時代は変わりました。農業の時代です。それによって堆肥が作られず田畑に入らなくなってしまったので、堆肥づくりサイクルは終焉を迎えました。この時代のターゲットは工業化と海外進出だったのでメインテーマは工数の確保でした。食糧生産に関わる人を減らすことが必要な時代だったので、化成肥料は立派に役目を果たしたのです。と言うよりも、その導入が日本の技術と経済の黎明期と重なったことで高度成長に無くてはならないツールを手にしたという評価さえ見えて来るのです。化成肥料が無かったら自給自足からの脱皮はいつになったのか、高度成長など有ったとは言えません。化成肥料は自然を壊す肥料だとして責められていますが、化成肥料が日本の農業を造った時代の日本の課題は自然保護ではなかったのです。問題は、役目の終わった栽培を自然が壊れる事に目を瞑って際限なく使い続けている事なのです。悪いのは化成肥料ではなく人間なのです。ですから自然栽培自然農などと称している栽培はこの責任回避放棄栽培を前提にしたうえで、自分が堆肥になる事で持続している自然からそれを収穫するだけで何も返さない奪取栽培を行っていることに一日も早く気付いてほしいと思います。その栽培が持続できるなら人類が何千年も見逃す筈がありません。
3.豊食の時代の堆肥
化成肥料によって生まれた労働力で築いた国力で大量に輸入される食料は豊食をもたらし後始末の行き先が無い事で手に負えなくなり社会問題になって来ました。一方農家はそんなに貰っても堆肥に出来ません。それによって化成肥料は圧倒的な労働効率の高さで堆肥を追いやって有機栽培を消すだけでなく、その奥で堆肥づくりを邪魔する事でも有機栽培を消していたことが誰の眼にも分かるものになりました。それは、化成肥料の生産性の高さで食糧生産が農業になったので食べる人が食糧を作る訳では無くなって、堆肥づくりサイクルが壊れてしまい堆肥を作る事すら出来なくなくなったという事なのです。これを有機栽培に戻すためには単に化成肥料を堆肥に替えるだけでなく、理由をきちんと対策することが必要です。堆肥の資源として食糧は目的からも資源量から言っても除けません。それを家庭のものが壊れた堆肥づくりサイクルなら地域スケールでまとめて堆肥づくりサイクルにして、そこで育てた食糧を化成肥料と競えるコストパフォーマンスで市場に提供することが必要になります。それは時代を先取りした形でミックス堆肥が40年以上前からやって来たことそのものです。ミックス堆肥は堆肥の長所を活かして成果を上げてきましたが、まだ世を席巻するようなものにはなっていません。それは他の条件はすべてクリアしても、トータルコストパフォーマンスが及ばなかったと云う事なのでしょうか。そうだとしても最新の科学技術を投入した省力化など色々な条件で有機栽培への壁は薄くなって活躍の場は近づいているのではないでしょうか。
4.オーガニックビレッジの時代の堆肥
いま日本は食料自給率が低いうえ自給している国内生産に必要な化成肥料の原料まで外国に依存していて、海外関係が切れてしまうと有機栽培だけが食料供給源になってしまいます。ここで農水省から自治体ぐるみで有機栽培に取り組むオーガニックビレッジつくりの方針が出されて、たくさんの自治体がオーガニックビレッジ宣言をしています。時代は変わりました。ミックス堆肥の出番がやってきました。農業は遅かれ早かれ有機栽培になるのです。生産に携わる人達が自分たちの問題として捉えてどれだけ早くオーガニックビレッジ宣言を出来るかが、この時代の変化を乗り切る為のカギを握っていると言えるでしょう。そして、有機栽培の基礎である有機肥料についてミックス堆肥をどう活かすかはその後のオーガニックビレッジつくりの進捗に大きな影響をもたらすでしょう。その実績と実力を新しい近郊農業への道に活かすことによって、市の中で堆肥づくりサイクルが廻り学校でも食べ物を自然の力で作ることの大切さを肌で感じられるような、かすかは、オーガニッ時代の先頭を進む有機栽培の里になることができるのです。私は最近あるところでツバメの巣を見かけて、家ツバメが初めてヒナを育てたことを知りました。そして直ぐに冒頭の風景を思い出し、彼らはオーガニックビレッジつくりを催促に来た、というのも有っても良いと思いました。なぜなら、その風景は私たちが安心して住めるところが彼らが安心して住めるところでも有ることを物語っていたからです。そしてそれはミックス堆肥で目指すオーガニックビレッジの世界でもあるのでした。
“活き活きと実をなし結ぶなすの株みえる根に棲む菌の活き活き”
令和五年九月吉日 地元に根付いた野菜
補考
ミックス堆肥が出番だと言いながら何も説明もしていないので、ここに独断ですが説明させて頂きます。
1.堆肥とはどんな物なのか
ミックス堆肥は堆肥なのでその説明は浄化槽を例にとると分りやすいと思います。今は2層式浄化槽というものが有って家庭から出る有機物は台所からトイレまですべてここで処理されて土と水になります。そして水は下水に流され土は定期的に回収されます。そこでは送られた有機物はまず1層目で嫌気性菌によって分解されてそれが2層目で好気性菌によって単純なものに変わって行きますが、その過程で持っているエネルギーを放出して最終的には土になるのです。これは自然界の基本的な作用で植物はそのエネルギーを使って成長するのです。ですから堆肥は好気性菌が単純なものに変えて行く過程の途中の物なのです。そのため、堆肥づくりを早く止めてしまうと作用がまだ終わらず必要のないものが残っていて畑の中でガスや熱が出て根を痛めるし遅いとエネルギーが減って効かない堆肥になります。
2.堆肥は何をするのか
堆肥の特徴は菌が作物と一緒になって作物を育てることです。堆肥は作物の基になっている有機物を嫌気性菌と好気性菌が分解して作るので作物が必要な元素を微量元素なども含めてすべて堆肥の中の菌が持っています。それを畑に入れて耕すとその栄養を持ったまま菌が作物と共生して棲みついて菌糸でつながっている糸根に直接栄養を与えます。作物はそれを太陽のエネルギーで栄養価の高いものに変えて成長して菌にも返します。ですから栄養も作物に必要なものが必要な時に必要なだけ送られるのでその作物らしい作物になるのです。悪い菌によって発生する病気にも菌が守っているので強いのです。農薬が必要なのは何も守ってくれない化成肥料で育っている作物なのです。それだけでなく菌は畑の有機物の分解もして栄養が出来るので、それで微生物が育ちそれを餌にするミミズのような小動物が増えて土が団粒化して柔らかくなります。堆肥は作物のペアなのです。かつてこの地では堆肥づくりサイクルを当時の技術で実現するために2層式浄化槽と全く同じことが行われていました。溜めと言われた場所で1年間人糞も嫌気性発酵されてその印象の全くないものにされました。浄化槽の1層目です。それを霜対策の終わった広葉樹の落ち葉を積み上げた上から振掛けて好気性発酵をしました。浄化槽では2層目でポンプの空気を送っています。そして積み上げた落ち葉の上ではその発酵熱を利用してサツマイモの苗が育てられてそれが終わったものが堆肥です。まったく無駄にする物の無い堆肥づくりサイクルでした。その文化の流れは武蔵野の落ち葉堆肥づくりとして世界農業遺産に認められました。私たちの堆肥づくりサイクルの歴史と精神は世界に認められたのです。
3.ミックス堆肥は何をするものなのか
ミックス堆肥は基本的に自給自足時代の堆肥づくりサイクルを復活したものですが、自給自足は生物の基本的な生命形態そして暮らすと云うのはその時代の技術と文化を持った人間という動物として生きる事なので、食べっぱなしの物を堆肥にすると云うのは私達が自然に迷惑をかけず責任をもって暮らすことになるのです。それから、堆肥はオーガニックビレッジが進むにつれてたくさん必要になるのでミックス堆肥は技術を向上させて有機資源を無駄なく使うように進んで行きます。昔に戻るのです。そして自給自足時代に家庭で行われていたことが地域単位で行われる様になるでしょう。何をするものかを一口で言うと“ミックス堆肥を使うことは自分が自然の中で生きる事の責任を少しだけ持つことになる”というものです。
4.オーガニックビレッジ時代の求める肥料
有機栽培に戻すためには労働効率の高いことで直接堆肥を追い出すだけでなく、堆肥づくりサイクルを壊して堆肥づくりを出来なくしていたのでこの二つを解決することが必要です。労働効率が良い事の直接の影響は数値なので最新技術の投入による省力化などで近づけるし我慢もできると思いますが、堆肥づくりサイクルは自然界の法則的なものなので、ほかの方法で作った堆肥は足しにはなってもオーガニックビレッジを成立出来ないように思えるのです。自給自足時代に続いた有機栽培は化成肥料の登場によって農業の時代になり社会は豊かになりましたがそれは有機栽培で無いことが条件でした。しかしそれは二つの条件さえクリアすれば有機栽培に出来る事でもあるので、ミックス堆肥は40年以上前からそれに取り組んでいる訳です。そしてこれからオーガニックビレッジが進んで行き生産効率も最新の科学技術の投入などで上がって行くでしょう。やはりその先にオーガニックビレッジが求めているのは過去への回帰、あの何も無駄にしない活かす文化なのでしょう。それを最新の科学技術とスタイルで実現することなのでしょう。それに向かって先鞭を切っているミックス堆肥の先駆の価値と活かす心が光ります。これで締めますがミックス堆肥が出番になった事の説明になったでしょうか。また、ミックス堆肥にはリンカリ堆肥というペアといっても良い共鳴する堆肥が有りますがなぜ効くのか知りたいです。種子の生命力に関係が有るように思えてしまうのですが教えていただきたいです。
令和五年十月吉日 地元に根付いた野菜